健康 健康動学第1回
立つ・歩く 前編
立ったり歩いたりというのは人間にとって基本的な動作。日頃、まったく無意識に行っていることですが、それだけに、もし間違った姿勢をとっていると身体全体に大きな狂いが生じてきます。さて、あなたの立ち方、歩き方は正常ですか?
腰痛は2足歩行から始まった
 人間が2足歩行を始めたのはおよそ500万年前だと考えられています。それによって両手が使えるようになり、道具の使用を覚え、脳の進化をもたらしたと言われますが、2足歩行によって人類は大きな代償を払わねばならなくなりました。それが腰痛です。
 2足歩行するようになると、当然上半身の体重を支えるために、腰の骨や筋肉に大きな負担が加わります。ところが人体は、この負担をうまくかわすように進化してきました。
人間の骨盤は直立した後も依然として30度ほど前傾しており、そのまま2本の脚で身体を支えようとすると上体が前に傾いてしまいます。これを解消するため、背骨に緩やかなS字型のカーブ(生理的弯曲)が生じました。
 つまり背骨は、首(頚椎)と腰(腰椎)では前に反っており、胸(胸椎)の部分では後ろに反っているのです。このカーブが身体が受けるさまざまな振動や衝撃を吸収し、背骨にかかる負担を緩和しているわけです。
 ところが不自然な姿勢をしていると、このS字カーブを保てなくなります。その結果、背骨を形成する骨(椎骨)に無理が生じ、腰痛を招くことになるのです。

背骨の生理的湾曲
どうして腰痛は起こるのでしょう?
背骨の重心線がずれると…
 原因がはっきりしていない腰痛の場合、ほとんどが悪い姿勢や肥満、運動不足による筋力の低下によるものです。背骨が生理的弯曲を保っていれば腰に余分な負担をかけることはありませんが、腹ばいになる、イスに浅く腰掛ける、無理な姿勢で仕事をする、乗り物の中で立ったまま本を読むといったことを続けていると、この弯曲にゆがみが生じて腰痛を招くことになります。
 肥満がなぜ問題なのかというと、太りすぎると腰椎にかかる重量が大きくなるだけでなく、突き出た腹のために重心が前に移動するため、腰椎の前弯が強まり、姿勢が悪くなるからです。
背骨のクッションが破れてしまうと…
 人の背骨(頚椎、胸椎、腰椎)は、24個の椎骨からなり、それぞれの椎骨は椎間板によって連結しています。椎間板は弾力性に富んだ軟骨組織で、いわば背骨にかかる力を和らげるクッションの役割をしています。
 椎間板の中でも最も負担がかかるのは腰椎の3番目と4番目、4番目と5番目の間。体重70kgの人は、普通に立っているだけでこの部分に約100kgの重量が、前かがみの姿勢になるとなんと150 kgの重量がかかるのです。
 急に腰をひねったり重いものを持ったりして椎間板に強い負担がかかると、椎間板が破れて中の髄液が飛び出してしまいます。その結果、周囲の神経が刺激されたり、血行が悪くなったりして痛みや痺れといった症状が生じたものが「椎間板ヘルニア」です。
椎間板ヘルニア
クッションの弾力性が低下すると…
 歳とともに椎間板の弾力性がなくなってくると、椎骨の間が狭くなり、スムーズな動きができなくなってきます。すると椎骨の縁の部分にトゲのような骨棘というものができてきます。
 このような変化によって神経が圧迫されたり、周囲の筋肉に負担がかかるようになると痛みが生じてきます。この状態を「変形性脊椎症」といいます。椎間板ヘルニアは20〜30歳代に多いのですが、変形性脊椎症は50歳過ぎに多く発症します。
変形性脊椎症

ぎっくり腰ってどんな状態
急性の腰痛を総称してぎっくり腰と言います。原因はいろいろですが、主に腰の筋組織や腱などが傷ついたり、関節の部分が捻挫することで起こります。椎間板ヘルニアの一歩手前の状態で生じることもあります。何の徴候もないため、ドイツでは「魔女の一撃」と呼ばれるのだとか。


<協力:日本航空健保組合>



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